リコール率とは?まず自院の数字を出す
リコール率とは、定期検診やメンテナンスの案内に対して、実際に再来院した患者さんの割合のことです。治療が終わった患者さんが、その後も継続して通ってくれているかを示す指標と言い換えてもいいでしょう。
計算方法は医院によって異なりますが、シンプルなのは「今月リコール対象になった患者数」に対する「実際に来院した患者数」の割合です。まずは直近12ヶ月分を月別に出してみてください。
ここで大切なのは、業界平均と比べないことです。診療方針・患者層・立地によって適正水準はまったく違いますし、そもそも計算方法が医院ごとに違うため、他院の数字と並べても意味がありません。見るべきは自院の推移です。上がっているのか、横ばいなのか、下がっているのか。それだけで十分に判断材料になります。
なぜ新患集めより先にリコールなのか
「新規患者が足りない」というご相談をよくいただきます。しかし数字を拝見すると、新患は毎月入っているのに、同じくらいの人数が静かに離れている——というケースが少なくありません。バケツに水を注ぎながら、底の穴を放置している状態です。
経営的に見ると、この差は大きく効きます。新患を1人増やすには広告費がかかります。一方、既存の患者さんに戻ってきてもらうのに広告費はかかりません。かかるのは、声をかける手間と、その手間を続ける仕組みだけです。
しかも、通い慣れた患者さんは自費の提案も受け入れやすい傾向があります。信頼関係ができているからです。自費率を上げる取り組みとリコールは、実は同じ土台の上にあります。
だから当社は、広告費を増やす相談を受けたときも、まず「離脱していないか」を確認します。穴が空いたままの状態で広告を足しても、獲得単価に見合う成果は残りません(この考え方は歯科医院の広告費は月いくらが適正?で詳しく書いています)。
患者さんが離れる3つのタイミング
支援の現場で数字を追っていくと、離脱は決まった場面で起きています。
- 治療が終わった直後——一番大きい山です。主訴が解決したので、患者さんの中では「終わったこと」になります。ここで次の約束がないと、そのまま自然消滅します
- 1回目のリコール案内——数ヶ月後に届く案内は、患者さんにとって突然の連絡です。院内で受けた説明を覚えていなければ、「なぜ行く必要があるのか」が分からないまま流されます
- 1回キャンセルしたあと——予定が合わずに一度断ると、次の接点が切れます。ここでフォローがないと、そのまま来なくなります
3つに共通するのは、患者さんの意欲の問題ではなく、こちら側の接点が切れていることです。つまり打ち手も、意識を変えることではなく接点を切らさない仕組みを作ることになります。
再来院を仕組みにする5つの打ち手
打ち手1:次回予約を、その場で取り切る
最も効果が大きく、かつ最も見落とされているのがこれです。治療完了時やメンテナンス終了時に、患者さんが帰る前に次回の予約を入れてしまう。「3ヶ月後にご案内しますね」で終わらせず、その場で日時を押さえます。
後から案内を送って予約を取り直すのと、最初から予約が入っている状態では、来院率がまったく違います。案内は「ゼロから決めてもらう」お願いですが、予約済みなら「決まっている予定を守る」だけだからです。
打ち手2:治療の最後に「次の目的」を伝える
次回予約を取るとき、なぜ来る必要があるのかをひとこと添えます。「詰めた部分の状態を確認します」「歯ぐきの数値がここまで改善しているので、維持できているか見ましょう」。目的が具体的なほど、予約の重みが変わります。
逆に「念のため定期検診を」だけでは、忙しくなれば後回しにされます。患者さんにとって行く理由が自分ごとになっているかが分かれ目です。
打ち手3:担当者と締切を決める
リコール業務は「手が空いた人がやる」になりがちで、そうなると忙しい月ほど抜けます。担当者を決め、「毎週◯曜日に翌月分の対象者リストを確認する」といった締切を運用に組み込みます。特別なシステムは必要なく、まずは役割と曜日を決めるだけで変わります。
打ち手4:連絡手段を1本に頼らない
はがきだけ、電話だけ、という医院は多いのですが、患者さんによって届く手段は違います。若い層にはメールやLINE、高齢の患者さんにははがきや電話が届きやすい。患者層に合わせて手段を分けるだけで、同じ案内でも反応が変わります。
なお連絡の際は、個人情報の取り扱いと、患者さんから配信停止の意思があった場合の対応をあらかじめ決めておいてください。
打ち手5:キャンセル・未来院を放置しない
キャンセルの電話を受けたら、その場で振替日を提案します。未来院のまま数ヶ月経った患者さんには、期間を決めて一度だけ声をかけます。しつこく追いかける必要はありません。接点が切れた瞬間に一度だけ手を伸ばす——これがあるかないかで、戻ってくる人数は変わります。
「はがきを出しているのに来ない」の正体
院長からよく伺うのが「案内は出しているんです。それでも来ないんです」という声です。数字を追っていくと、原因はたいてい案内そのものではありません。
多いのは、案内を出す時点ですでに接点が切れているケースです。治療完了から数ヶ月空いてから届く案内は、患者さんの中で医院の記憶が薄れたあとの連絡になります。打ち手1で次回予約を取り切っていれば、そもそも案内は「リマインド」で済みます。案内の文面を工夫するより、案内を出す前の段階を直すほうが効きます。
もう一つは、出した結果を記録していないケースです。何人に案内して何人が来たのかを追っていないと、改善のしようがありません。数字を出すこと自体が最初の打ち手になります。
スタッフを巻き込む進め方
リコールの仕組みは、院長ひとりでは回りません。そして「リコール率を上げよう」と数字だけを掲げると、スタッフには「ノルマが増えた」と受け取られます。
うまくいっている医院は、目的を「担当した患者さんの状態を、最後まで見届ける」という形で共有しています。衛生士にとっては、自分が関わった患者さんの口腔内が維持できているかを確認する仕事です。この位置づけなら納得感があり、実際それが本質でもあります。
進め方は、全部を一度に変えないことです。まず打ち手1(次回予約をその場で取る)だけを1〜2ヶ月徹底し、数字の変化を見る。効果が見えるとスタッフの納得度が上がり、次の打ち手が入れやすくなります。
よくある失敗パターン
- 案内の文面やデザインから手をつける——効果が出るのは、その前段(次回予約を取り切る運用)を直したときです
- 担当者を決めずに始める——忙しい月から抜け落ちて、続きません
- 数字を取らずに感覚で判断する——何人に案内して何人来たかを記録しないと、良し悪しが分かりません
- スタッフ個人の成績にする——医療現場に営業ノルマ的な運用を持ち込むと、患者さんにも伝わります。見るのは個人ではなく仕組みの数字です
- 離脱した患者さんを追いかけすぎる——一度声をかけて反応がなければ、そこで区切ります。深追いは信頼を損ないます
よくある質問
Q. リコール率は何%を目指すべきですか?
統一された基準はありません。計算方法自体が医院ごとに違うため、他院の数字と比べても判断材料になりません。自院の推移で見て、上がっているかどうかを確認するのが健全です。
Q. どのくらいの期間で数字が変わりますか?
次回予約をその場で取る運用は、始めた月から予約の入り方が変わります。ただしリコール率という結果に表れるのは、リコール間隔(3ヶ月・6ヶ月など)の分だけ後になります。半年程度は見ておくのが現実的です。
Q. 予約システムやアプリを導入すべきですか?
最初から必要ありません。まずは担当者と締切を決め、次回予約を取り切る運用を回すこと。それが定着してから、手作業が追いつかなくなった段階で仕組み化を検討する順番が現実的です。ツールを入れても運用が決まっていなければ、結局同じ場所で止まります。
Q. 患者さんに「しつこい」と思われませんか?
分かれ目は回数ではなく、伝え方です。「次はこの状態を確認します」と目的が明確な連絡は、案内ではなく必要な情報として受け取られます。一方で目的のない催促を繰り返せば、当然しつこく感じられます。反応がなければ一度で区切るというルールも、あわせて決めておいてください。
まとめ:バケツの穴を先に塞ぐ
この記事の要点です。
- リコール率が上がらない原因は、患者さんの意識ではなく院内の仕組みの不在
- 新患を1人増やすには広告費がかかるが、戻ってきてもらうのに広告費はかからない
- 離脱は「治療完了直後」「1回目の案内」「1回キャンセルしたあと」の3つで起きる
- 最も効くのは、帰る前に次回予約を取り切ること。案内の工夫はその後
- 担当者と締切を決め、連絡手段を患者層に合わせて分ける
- 業界平均と比べず、自院の推移で判断する
集患そのものの設計は患者導線の見直し、外部の支援を検討する場合は歯科コンサルの選び方もあわせてご覧ください。