英語が苦手でも、海外メーカーと交渉できるのか?
できます。ただし正確に言うと、「英語がまったくいらない」わけではありません。「流暢な英語はいらない。道具と段取りで補えばいい」が実務の実感です。
ここで言葉をひとつ定義しておきます。輸入総代理とは、海外メーカーと独占販売契約を結び、その商品を日本市場で独占的に販売するビジネスモデルのことです。価格競争になりやすい転売とは異なり、メーカーとの継続的な信頼関係が土台になります。(全体像は中小企業の新規事業に「輸入総代理」という選択肢で解説しています)
「信頼関係が土台」と聞くと、ますます語学力が必要に思えるかもしれません。しかし実際の交渉の現場では、英語の流暢さと契約の成否は、驚くほど関係がありません。その理由から説明します。
なぜ英語力が契約の決め手にならないのか?
メーカーが探しているのは「通訳」ではなく「売ってくれる人」
メーカーの立場で考えてみてください。海外から「日本で売らせてほしい」という連絡が来たとき、知りたいのは相手の英語力ではありません。日本でどれくらい売ってくれるのか、どんな販路を持っているのか、本気で取り組む相手なのかです。英語が完璧でも販売計画が曖昧な相手より、英語はつたなくても「誰に・どこで・どう売るか」を具体的に語れる相手が選ばれます。
相手も英語のネイティブとは限らない
私が独占販売契約を結んできた相手のうち、英語が母語の国はアメリカとイギリスだけです。香港・中国・台湾・韓国のメーカーとのやり取りは、お互いに外国語としての英語を使う「第二言語同士」の会話でした。シンプルな英語で、確認しながら進めるのが当たり前の世界です。難しい言い回しは、むしろ伝わりません。
商社時代に学んだ「完璧な英語」より「明確な英語」
私は独立前、繊維専門商社で約4年間貿易実務に携わり、うち1年はバングラデシュ・ミャンマー・ベトナムに駐在していました。いずれも英語が母語ではない国です。それでも数量・納期・品質基準のやり取りは毎日動いていました。貿易の現場を回しているのは、流暢な英語ではなく、誤解の余地がない明確な英語と、約束を守る積み重ねです。この感覚は、独立して自社で海外メーカーと交渉するようになってからも変わっていません。
英語が必要になるのはどの場面か?
「海外メーカーとの交渉」をひとまとめに恐れる必要はありません。場面ごとに分解すると、求められる英語の種類と量はまったく違います。
- 初回コンタクト〜条件のすり合わせ——ほぼすべてメールやチャットの文字のやり取り。実務の体感では、交渉全体の8〜9割がここに含まれます
- オンライン商談——30〜60分の会話。ただし後述の準備で、会話への依存度を大きく下げられます
- 展示会での接触——挨拶と短いやり取り+名刺・資料交換。込み入った話はその場でしません
- 契約書の確認——英文の読解が必要ですが、会話力は不要。かつ最終確認は専門家に任せる前提です
つまり、「話す英語」が求められる時間はごく一部で、大半は「書く英語」です。そして書く英語は、翻訳ツールが最も得意とする領域です。
メールは翻訳ツールでどこまで戦えるか?
結論、実務で困らないレベルまで戦えます。ただし、ツール任せにせず押さえるべきコツがあります。
- 元の日本語を短く区切る——一文にひとつの内容だけを入れ、主語を明示する。翻訳の精度は「元の文の明確さ」でほぼ決まります
- 逆翻訳で検品する——できた英文をもう一度日本語に訳し戻し、意味が崩れていないか確認してから送る
- 定型のやり取りはテンプレート化する——見積依頼・サンプル依頼・納期確認など、繰り返す用件は一度作った文面を磨いて使い回す
当社は営業代行として、海外メーカーへの初回コンタクトを253件送り、56件の返信(返信率約22%、案件によっては35%超)を得てきました。この経験から言えるのは、返信を分けるのは英語表現の巧拙ではなく、「なぜ貴社に連絡したのか」を具体的に書けているかどうかだということです。文面の組み立て方は海外メーカーへの交渉メール|返信される初回文面の作り方で詳しく解説しています。
商談や展示会はどう乗り切るか?
オンライン商談は「読む・見せる」に置き換える
英語での会話に不安があるなら、会話に頼らない商談を設計します。
- アジェンダを事前にメールで送る——話す内容が決まっていれば、想定問答を準備できます。相手にとっても親切です
- 提案資料を画面共有して進める——「聞く・話す」を「読む・見せる」に置き換えると、その場の聞き取り力への依存が一気に下がります
- 決まったことはその場で文字にする——チャット欄への書き込みや商談後の確認メールで合意内容を残す。聞き取りに自信がなくても、「あとで文字で確認する」前提なら怖くありません
- 重要な局面だけ通訳を入れる——独占条件や金額の詰めなど、誤解が許されない場面は通訳に頼るのが確実です。オンライン通訳なら商談単位で依頼できます
展示会は「その場で決めない」と割り切る
海外展示会でも、ブースでの会話は挨拶・簡単な質問・資料と連絡先の交換までで十分です。詳細は「後日メールで送ります」に持ち込めば、じっくり翻訳ツールを使って組み立てられます。展示会での動き方は海外展示会で総代理権を獲得するための準備と交渉のポイントにまとめています。
英語の不安も含めて、進め方を一緒に設計します
どの商品を狙うか、メーカーへ何を提案するか、商談をどう組み立てるか。海外メーカーとの交渉を現役で続けている実務者が、貴社の状況に合わせてご提案します。
無料相談してみる語学力より大事な3つのこととは?
英語の不安が解消できたとして、では何が契約を決めるのか。実務を通じて確信しているのは、次の3つです。
1. 日本市場でどう売るかの計画
販路・ターゲット・価格帯・プロモーションの構想。メーカーが一番聞きたいのはここです。完成度の高い事業計画書である必要はなく、「誰に・どこで・どう売るつもりか」を自分の言葉で具体的に語れることが重要です。
2. メーカー側のメリットの提示
「売らせてください」ではなく、「貴社が日本展開で抱える手間とリスクを、当社が引き受けます」という提案の形にすること。言語や商習慣の壁、規制対応、販路開拓——メーカーが自力でやると重い仕事を肩代わりする存在だと伝われば、交渉のテーブルは対等になります。
3. 誠実で速いレスポンス
時差を踏まえて素早く返信する。約束した期日を守る。できないことは曖昧にせず「できない」と伝える。信頼は語学力ではなく、こうした行動の積み重ねで築かれます。逆に言えば、英語が流暢でも返信が遅い相手は選ばれません。ここは語学と違って、今日から誰でも実行できる領域です。
英語に不安があった支援先はどうなったか?
当社の導入支援に入る企業の多くも、「英語に自信がない」「海外メーカーとの交渉に不安がある」という状態からスタートしています。個別相談で最初に出てくる質問も、資金と並んで語学が大半を占めます。
そのひとつ、YouTube事業を主軸としていた株式会社はるとな様は、物販も海外交渉も未経験からのスタートでした。最初の商談は当社が同席して流れをつかんでいただき、以降はご自身で交渉を自走。約8ヶ月で海外メーカー4社と独占販売契約を結び、クラウドファンディングでは累計2,400万円を超える応援購入を達成しています。交渉の壁は、語学力ではなく「初回の経験」でした。一度流れを体感すれば、あとは同じ型の繰り返しです。
よくある質問
Q. 契約書も翻訳ツールで読んで大丈夫ですか?
契約書だけは別扱いにしてください。翻訳ツールで全体の内容をつかむことはできますが、独占権の範囲・最低発注数量・契約解除の条件など、一語の解釈が損益を左右します。サインの前に必ず専門家の確認を入れてください。確認すべき条項は独占販売契約書のチェックポイントで解説しています。
Q. 通訳はどうやって手配すればいいですか?費用はどれくらいかかりますか?
オンライン通訳サービスや、ビジネス通訳者への単発依頼で、商談1回単位から手配できます。費用は依頼先や時間により幅がありますが、すべての商談に付ける必要はありません。条件を詰める重要な商談に絞れば、負担を抑えながら誤解のリスクを消せます。
Q. 英語を勉強してから始めるべきですか?
待つ必要はありません。実務で使う英語表現は驚くほど限られており、案件を進めながらのほうが早く身につきます。それよりも、市場調査や商品選定など、日本語でできる準備を先に進めるほうが成果に直結します。何を基準に商品を選ぶかは輸入代理店の商材の選び方をご覧ください。
まとめ:語学の壁は、道具と段取りで越えられる
この記事の要点です。
- 英語が苦手でも海外メーカーとの交渉はできる。やり取りの8〜9割は文字で、翻訳ツールで補える
- メーカーが見ているのは語学力ではなく、日本市場で売る計画と本気度。相手も英語のネイティブとは限らない
- メールは「短い日本語+逆翻訳の検品」で精度が上がる。商談は「読む・見せる・あとで文字で確認」に置き換える
- 独占条件や金額を詰める重要な商談だけ通訳を入れ、契約書は専門家の確認を必須にする
- 英語の勉強を待つより、商品選定と市場調査を先に進めるほうが成果に近い
語学を理由に見送るには、輸入総代理はもったいない事業です。英語の壁は道具と段取りで越えられますが、「どの商品で、どのメーカーと組むか」の判断は事業の成否を直接左右します。力を注ぐべきはそちらです。
初回商談への同席サポートも行っています
メーカー探しから提案書づくり、商談の進行まで、実務者が伴走します。「英語がネックで動き出せていない」という段階のご相談も歓迎です。相談は無料です。
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